5. 霧のロンドン:ヴィクトリア朝小説における不安と欲望
代表者
余 玟欣(国際文化学研究推進インスティチュート・学術研究員)
分担者
深町 悟(国際人間科学部・国際文化学研究科・講師)
協力者
小笠原 博毅(国際文化学研究科・教授)
プロジェクトの目的
ヴィクトリア朝(1837-1901)の小説は、近代化と都市化に対する「不安」を消費する娯楽でありながら、帝国主義、近代資本主義、西欧社会に潜在する欲望などを表現する装置として、歴史的、社会的な変遷に対応しながら、様々なジャンルに発展してきた。それゆえ、これまでの研究者はヴィクトリア朝の小説を「大衆娯楽」の枠組みにとどまらず、「帝国主義に対する不安」、「社会ダーウィニズムや優生学的な思想などの行き過ぎたモダニズム」、「変装と身体の加工」、「犯罪報道の二重性」、「ダブルスタンダードと倒錯の欲望の葛藤」などの表象として、様々な切り口で論じてきた。
しかし、研究書が数多く刊行されている一方で、それらの研究成果が独立しており全体としてバラバラになっているため、これらを取りまとめることが目下の課題であると考える。そこで、本プロジェクトでは、各々が専門とする様々な小説におけるヴィクトリア朝的世相およびその価値観を撹乱する諸表象について先行研究を踏まえながら考察を進めるとともに、都市論、科学論、身体論、メディア論、ジェンダー論などを横断しながら、ヴィクトリア朝の小説に関する多角的な実証研究の構築を目指す。