2.宝塚歌劇にみる国家プロパガンダ:満州進出をめぐって

代表者
張嘉慧

協力者
Mengda JIANG(the Good Shepherd United Church of Christ・Music Director)

プロジェクトの目的

宝塚少女歌劇(以下、宝塚)は、1930年代初頭に日本で初めて、当時パリを中心に大流行していた「レビュー」を取り入れ、日本の芸術界に新しい潮流を巻き起こした。しかし、まもなくの1934年からは、日本政府や軍の後援のもとで、一風変わったプロパガンダ的な作品を上演するようにもなっていた。時局の進展とともに、『光は東方より』(1937)をはじめ、宝塚は異民族を扱った「事変物」を上演し、日本の優位性や満州開拓の正当性を主張していた。さらに1939〜1943年には、「満州国建国十周年慶祝国民親善使節団」などの名目で、満州各地で公演を行っている。宝塚は同時期に「芸術使節団」としてドイツ・イタリアやアメリカでも公演を行ったが、満州公演とは政治的意図が大きく異なっていたと考えられる。本プロジェクトでは、満州で上演された作品および満州を背景にした作品を対象とし、これらがいかなる意図で日本と満州の関係性を構築し、どのような表象を行ってきたのかを、上演の背景、パフォーマンスの内容、音楽の形式といった諸要素から分析し、少女歌劇による国家プロパガンダのダイナミズムを多角的に明らかにすることを目的とする。