1.チアパス高地(メキシコ)の人類学と文学から考える「先住民」の枠組み
代表者
鋤柄史子
協力者
ホセ・ルイス・エスカロナ・ビクトリア教授(社会人類学高等研究所(メキシコ、Promis学術協定校))
プロジェクトの目的
本プロジェクトは、メキシコのチアパス高地で展開されてきた学術活動において「Indígena(先住民)」という枠組みがどのような知的関心のもとで構想され、文脈化されてきたのか、また、その過程においてどのような政治的かつ社会的言説が構成されてきたのかという問いをたて、それについて人類学的観点から探究することを目的とする。具体的には、関連する先行研究を集約して批判的考察を図るとともに、「先住民」とカテゴライズされる文芸作家とともにこの枠組みについて再考を図る。
チアパス高地の「先住民文化」は、19 世紀末より西欧近代科学の関心を受けて以来、人類学、歴史学、言語学を筆頭にしながら文学や芸術の領域でも研究が展開されてきている。他方、近年では「先住民文学」や「先住民文化」といった概念が覇権的見地から構造化されてきたこと、その構造化のプロセスにおける主体性の不在に関して十分な議論がなされていないことなどに対して批判的考察が求められている。本プロジェクトではこうした展開をふまえ、近年の学術動向に的を絞って先行研究を集約する。そして日本の学術界にもこの問題について問いかけを行えるよう、本プロジェクトの記録を 2025 年度 Promis 年報の別冊(予定)に発表する。