4. 宝塚歌劇ファンの二次創作に関する研究:同人小説とファン翻訳をめぐって 

代表者
張嘉慧(国際文化学研究推進インスティテュート・協力研究員) 

分担者
余玟欣(国際文化学研究推進インスティチュート・学術研究員)  
朱藹琳(国際文化学研究推進インスティチュート・連携フェロー)

プロジェクトの目的

 宝塚歌劇における女性の表象と、女同士の関係性の活発な生産と消費は、女性の欲望の経済と視覚化において、大きなエンパワメントの場を提供している。そして、インターネット技術の進化に伴い、それに関する消費行為と文化的活動が一層活性化になり、グローバルな拡散まで実現した。その中で、「同人小説(動画・絵など)」や「ファン翻訳」などファンによる無給で自発的な「二次創作」が目立っている。今まで、欧米と日本では、ファンの創作動機、二次創作に携わるコミュニティの特徴、二次創作の流通形式などに関する研究が進められた。一方、ファン翻訳のコミュニティの方針・実施方法の調査や、翻訳のテクストの分析などの研究も見られる。ただし、宝塚歌劇ファンによる二次創作は、「女性による女性向けの物語を女性が作り替える」という特殊性があり、今までの二次創作に関する研究の主な対象の性質とは明らかに異なっている。したがって、本プロジェクトは、インターネットにより拡散された宝塚歌劇の「同人小説(動画・絵など)」と「ファン翻訳」を中心に、「女性による女性向けの物語を女性が作り替える」ことが持つ意味、当事者のアイデンティティとの関係性、そしてこのような二次創作の作品とコミュニティがどのような特殊な機能と構造を持ち、具体的に何を導くのかなどの考察を進める。