1. 越境の文学実践:接触領域としての翻訳を考える

代表者
鋤柄 史子(国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員)

協力者
安保 寛尚(立命館大学法学部法学科 教授)           

プロジェクトの目的

 本研究は、翻訳と越境という二つの概念を文学実践の前提としてとらえ、言語や国家などによって規定されがちな文学領域を再考するとともに、文学が本来有する交差性と流動性について議論を深めることを目的とする。二つの言語で書く・または翻訳するという行為は、両言語間に接触をもたらすと同時に、その接触によって生成された言葉や表現を各言語の領域内へと再編していくプロセスといえる。あるいは、こうした越境する経験とは言語間の事象に限定されるものではない。一言語内で行われる言語行為やある一定の文化圏における文学実践もまた、規範化された枠組みを超える越境性をつねに有しているからだ。翻訳を広義でとらえながら作家または作品が経験する多様な越境について、とくにディアスポラ作家や先住民作家の文学実践の研究に取り組む専門家を交えて多方向的かつ複合的な議論を行う。